「はくしゅ」147:道徳 オリンピック選手から学ぶ

「清水選手」の語り
4年前、長野オリンピックで金メダルをとりました。
「金メダルを取っても自分を極(きわ)めたとは思えなかった。
 僕の目的は、人間の未知の能力を探り当てることだと気づいたんです」
 
その後も、練習を続けました。しかし、腰を痛めました。オリンピックの今年の1月は、最悪の状態でした。かがんで靴下をはくことさえもできません。
きたえ上げられた最高の体。最高の技術。まれに見る精神力。しかし、どんなスーパーマンも傷を負(お)います。体も痛め、そして心も弱気になってきました。
「体への絶対的な自信をなくしていた」
「この3カ月間は精神的においつめられていた」
と、清水選手は言っています。
 
それでも彼は敗北者(はいぼくしゃ)にはなりません。負けません。
「もうダメかって思ってました。
 だけどここでやめたら、4年間が無駄(むだ)になりますから」
どんな人も、ケガをします。失敗します。希望がなくなることがあります。でも、絶望してはいけないのです。
 
ソルトレークオリンピック、本番前の清水選手の言葉です。
「こういう状態で金メダルを取れてこそ本当の実力者」
オリンピック直前でも「50%」のできだったそうです。注射をし、痛み止めを飲んでのレースでした。本当なら、レースができるような体の状態ではなかったそうです。
 その結果は、金メダルにわずか0.03秒届かなかった銀メダル。銀メダルが決まって、顔を下げていた清水選手に、コーチが言ったそうです。
「お前はすごい男だよ」。
 
レース後の言葉です。
「レースの内容は納得(なっとく)いくものじゃなく、やはりくやしい。」
「出来る範囲(はんい)内で今季のベストを尽(つ)くせた。満足です。」
 
そして清水は、次のオリンピックも目指すと言います。
「これからの4年? どんどん世界記録を縮(ちぢ)めていきたい」
「鍛えれば鍛えるほど体は進化し、追い込めば追い込むほど人間の潜在(せんざい)能力 は上がる」
ソルトレークの銀メダルの価値は何かと質問され、清水選手は答えています。
「競技者はケガすることが一番、大変。精神的にも不安定になる。
 でも、『あきらめずに、いかに自分を保つか』。スポーツ選手に役立つ、良い方向性が見 いだせればいいなと思う」
 
けがをプラスに、そして緊張感をもプラスに変える清水選手は、決して負けたのではないのです。